研究概要 |
本研究課題では,多変量モデルもしくは多次元分布モデルの母数推定において,従来の推定手法が何らかの欠陥をもち使用する上で修正が必要な問題を取り扱い,そのような問題を解決しうる有効な推定手法の開発とその際必要とされる新たな推定理論の展開及び現実のデータ解析での有用性を示すことを目的としている。 本年度は特に「不均一分散モデルにおける期待値母数の同時推定」の問題を中心に行い,多重線形モデルにおいて多重共線性が存在するときの安定したミニマクス推定手法の開発を行い,また標本サイズが不均一なときの小地域推定法に関してその誤差の推定問題を考察した。 前者は,計量経済学の分野での古典的な問題であり,通常の最小2乗推定量が不安定になってしまうことで知られている。これを解決する方法としてリッジ回帰法と主成分分析法が知られているが,いずれもミニマクス性などの好ましい性質を備えていない。そこで適応型リッジ回帰推定法が提案されたが,ミニマクス性を要求すると安定性が失われてしまう。そこで本研究では,トロント大学のSrivastava教授との研究連絡を通して,ミニマクス性と安定性を兼ね備えた推定手法として経験ベイズ法を提案し,シミュレーション実験による数値的比較と具体的なデータ解析を通して,それが極めて優れていることを示した。また一般化ベイズ的リッジ回帰推定法の導出とミニマクス性の証明を行った。 後者については,小地域推定量の平均2乗誤差の推定法として従来提案されてきた「漸近近似による推定手法」に対して,正確な推定手法と条件付き誤差に基づいた推定手法を新たに導出し、各手法の性質などを調べた。
|