初年度には経験ベイズ法の研究を推進した。高次元母数モデルの推定において、自然共役事前分布とピタゴラス関係の視点から研究した。自然共役事前分布は、指数分布族と一般化線型モデルの研究で開発されてきた手法で新しい展開を行うことができた。次年度には経験ベイズ法と推定関数を両面からの研究を行った。まず、自然共役事前分布の研究では事後モードの利用を検討した。通常の事後平均に比べて、自然共役事前分布の定義を広くできることが分かった。またこの関連でl-加法的な分布族を導入した。更に一般化線型モデルの連結関数について強不偏性からの特徴づけを試みた。推定関数と経験ベイズ法を平行して研究することにより、一方のみでの研究からは見え難い面に注目できた。その一つとして平均値母数と位置母数の相補的な関係に目をつけた。ベイズ的視点では平均の方が扱い易いと思われるが、推定関数では類似した解析的構造でありながら、位置母数の方が扱い易い場合がある。この点は研究成果に連がると共に、今後の研究の道標と期待できる。 この研究では、今日の理論研究において標準的な方向を目指した。理論面での裏付けは分布族の解析的な性質が解明されてきた事実に依拠している。一方応用面では、通信情報機器の進歩に裏打ちされた、良い設計の下での高次元データを対象にした。本研究でも教育試験を一つのターゲットとした。この研究の遂行で協力を得たのは藤井(宮崎大)、藤岡(広島大)、山本(岡山理大)、また平成13年と14年の客員教授である北里大学の竹内、東京大学の大橋がいる。更に途中からは程(北京工業大)が研究所に滞在して研究に携わった。 全体として、自然共役事前分布、一般化線型モデルから高次元母数モデルの構造と推測に寄与することができた。
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