研究概要 |
記憶,学習,注意,意識などの脳の高次機能の人工ニュートラルネットワークを用いた数理モデル化とその性質の研究は,高等動物の脳機能の理解や情報処理能力を解明する上で重要な課題であり,研究すべき問題点は多い.我々は,先ず学習速度に関する研究を行った.層状ネットワークに関して,教師ネットワークと生徒ネットワークのオンライン学習について,結合の切断による学習効果を研究し,教師ネットワークのランダム切断が生徒ネットワークの学習速度を改善することを明らかにした(日本物理学会欧文誌掲載予定,印刷中).次に,視覚の選択的注意に関する数理モデル化の研究をした.Crickによるサーチライト仮説に基づいた注意や意識機構の数理モデル化を行う前に,DesimoneとDuncanの仮説に基づき,Hodgkin-Huxleyニューロンを用いた,2層ニューラルネットワークによる注意の数理モデルを提案した.すなわち,海馬体と視覚皮質に関する視覚の選択的注意の数理モデルを作り,数値計算により,2層のニューロン集団間に発火時間に関してガンマ振動の同期現象が起こることを示し,注意に対する一つの解釈を与えた(日本物理学会2001年秋季大会発表,現在学術雑誌に発表のための原稿を作成中).また,FitzHugh-Nagumo方程式により2層ニュートラルネットワークを用いた選択的注意のモデルを提案し,その性質を解明した(日本物理学会2002年年会に発表予定).現在,Crickのサーチライト仮説に基づき,意識や注意などの数理モデルを提案するために,ニューロンセルの集まりを基にしたニューラルネットワークのセル状態の発火に関する動的発展方程式を作成して,その性質を解明中である.
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