研究概要 |
規則格子上に並んだノードからなるグラフィカルモデルにおける推論アルゴリズムのひとつとして,画像におけるエッジの「ある」,「なし」の状態を持つ結合ガウス・マルコフ確率場モデルにおける,そのエッジの状態を量子力学的意味における重ね合わせにより構成された状態に拡張したアルゴリズムを発展させ,複雑なライン場間の相互作用をもつ確率モデルを用いた画像処理に適用し,良好な修復が行えることを立証した.その成果の一部は「K.Tanaka, Journal of Physics A, Vol.35,No.37,2002」の中で公開した.更に,具体的な人工知能の分野における確率的推論機構に対するアルゴリズムとして知られる信念伝搬アルゴリズムをクラスター変分法と線形応答理論を用いて再定式化し,具体的な知識情報処理・人工知能の問題に適用し,高精度の結果が得られることを立証した.その成果の一部は2002年11月に横浜で開催された「計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会2002」および2002年12月にWhistler(Canada)で開催された国際会議「NIPS^*2002 Workshop on Propagation Algorithm on Graphs with Cycles : Theory and Applications」において既に公開し,現在,電子情報通信学会英文論文誌Dに投稿中である.量子力学的確率変数を導入した確率的推論機構の具体的アルゴリズムの構成にあたっては,この信念伝搬アルゴリズムと線形応答理論の導入が不可欠であるため,これらの成果は本研究を遂行する上での一つの段階として重要であった.上記で得られた知見をもとに,ハイパパラメータの周辺尤度最大化に基づく推定も含めた総合的な形での量子力学的確率推論理論の基盤整備・量子力学的効果の導入等を通しての確率的・量子力学的情報処理の実用的アルゴリズム開発へ向けての研究を現在進めている.
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