研究概要 |
平成14年度は,集積回路工学および計算機科学の2つの観点からの研究を並行して実施した. 1.昨年度に引き続き,マイクロ電極を人工触媒素子として用いた無配線集積回路に関する基礎実験を行った.すでに昨年度に,64個のPtマイクロ電極をガラス基板上に2次元的に集積化したマイクロ電極アレーの試作に成功している.このマイクロ電極アレーは,ベンゾキノン/ヒドロキノンの可逆なレドックス反応を制御し,人工反応拡散場の実験系を構築することを目的としている.今年度は,64個の電極の並列制御を行い,電極の協調動作により,興奮性を有する反応拡散場をチップ上に形成できることを実験的に実証した.特に,興奮性の反応拡散波に特有なさまざまなパターンの形成を視覚的に確認することに初めて成功した. 2.人工触媒素子による無配線集積回路は,反応拡散ダイナミクスのパターン形成能力を利用して,ある種の問題を超並列的に解くことが可能である.しかし,このような分子のダイナミクスを利用したアルゴリズムの系統的な設計法や計算能力は明らかになっていない.そこで,昨年度に引き続き,本研究代表者が提案する「ディジタル反応拡散システム(DRDS)」と呼ぶモデルに基づき,反応拡散場のパターン形成能力を利用した並列コンピューティングの可能性について検討した.特に,興奮性の反応拡散波を用いて2次元空間および3次元空間における最短経路探索問題を解く新しいアルゴリズムを提案し,さまざまな2次元・3次元マップにおける最短経路探索に適用し,総合的な評価を行った.
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