研究概要 |
20年後に実用となるような,新たな計算機アーキテクチャの数学的モデルとして,量子アナログ計算モデルの構築を行っている.本研究で提案する量子ニューロイダルネットは,量子ニューラルネットを一般化した数学的モデルなので,計算論的に厳密な議論が可能であり,また,モデルの物理的実現可能性の検討などにおいても,柔軟な条件の修正が可能となる.量子コンピュータの実用化に向けて,IBMやAT&T等の企業は関連特許をすでに登録し始めている.しかし,量子コンピュータを実現する際の問題点が数多く指摘されているため,量子コンピュータの実用化には,かなりの技術的困難が伴うものと予想されている.そこで,発想を転換して,量子コンピュータの数学的モデル自体を本研究で提案するモデルに変更すれば,量子コンピュータ実現における困難がかなり解消される可能性がある.平成13年度には,L. G. Valiantが1994年に提案した脳型計算モデルであるニューロイダルネットを量子化し,量子ニューロイダルネットと呼べる計算モデルを構築した.その結果を受けて,平成14年度には,代表的なNP完全問題である,論理式の充足可能性判定問題(SAT)を効率的に解く量子ニューロイダルネットを設計した.本研究では,万能計算モデルを構築するのではなく,量子ニューロイダルネットによる解法に適したNP完全問題を発見し,その特定の問題の解法に最適なネットワークを構成するという方針を採用している.その際,ローカルミニマムに陥ることなく,最適解に高速に収束することを保証するための,素子間の相互作用をどのようにモデルに組み込むかが極めて重要となる.そこで,最近,MITの研究グループが提案し,注目を集めている断熱量子計算の枠組みも取り込むことを検討している.
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