研究概要 |
多くの計算困難問題は実用上も重要な意味を持つが,大規模な問題を解くことが難しい.本研究の目的は,専用回路を用いて計算困難問題を高速に解くことである.本研究の背景については,共立出版『アルゴリズム工学』6.27節「計算困難問題と専用回路」に小文が掲載されたので参照されたい. 過年度,計算困難問題の実例として"部分グラフ同型判定問題"を取り上げ,その専用計算回路化について検討および評価を行ってきた.その結果,専用回路化に伴う回路規模の増大と,専用回路とメモリ間のデータ転送ボトルネック(フォンノイマン・ボトルネック)が問題であると認識するに至った.そこで本年度は,データに依存した専用回路を設計評価することによって回路規模の縮小および動作速度の改善が可能であるか検討した.暫定的評価で肯定的な結果が得られたので,2002年3月の電子情報通信学会総合大会で速報すると共に,年度内に結果をまとめて国際学会に投稿する予定である. 本年度は,研究計画どおり新たなFPGAプラットホームを検討し,AlteraとXilinxの評価システムを導入した.新システムの容量は現在の数十倍であるため,来年度以降の研究では,より現実的な応用や回路について検討を加えることが可能になった. グラフは非常に一般的で適用範囲が広いデータ構造なので,他の応用について本手法が適用できる可能性がある.本年度予備的な検討を進めるうち,立体モデル記述に含まれる冗長性を用いて情報を運ぶ手法を発見し,電子署名手法への応用を国際学会WSCG2002に投稿して受理された.本手法については,2002年中に論文誌に投稿する予定である.
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