研究概要 |
地理情報システム(GIS)は1980年頃からその必要性が認識され,世界中で地図データの整備が行われ,1990年代になって情報技術の進展に伴って爆発的に普及しつつある.その中で,地図の構成要素は幾何図形の組み合わせとして考えられることから,計算幾何の重要性がさらに増している.特に,デジタル化された地図において必要な情報をもじとして付加するためには,表示したい文字情報(ラベル)を適切な位置に読みやすい大きさで配置する必要がある.このような地図に対する注記の問題(ラベル配置問題)はこれまで人手によって経験的に行われてきたが,地図のデジタル化に伴い,自動的にラベルを配置する必要に迫られている.本研究では地図におけるラベル配置の自動化を目的として研究を行っている. 本研究では高度交通システムへの応用を考慮し,オンライン的処理も考えていくことを目的の一つとしている.本年度は静的な場合のラベル配置問題と高度交通システムの研究を中心に行った.特に,静的な場合に見やすい位置に自動配置することを重点的に研究を進めた.東京23区内の地下鉄やJRの路線図のデータを数値地図からとり,実際の地図データをもとに,駅名といった点に対するラベルと路線名のような辺に対するラベルを配置する各種の手法を提案し,それに対して計算機実験を行い,比較検討を行ってきた.手法の違いとしては大きく分けて,ラベルを配置する候補位置を離散的に定義する方法と連続的に定義する方法がある.離散的なモデルでは解法の構築や実装は簡単であるが,微調整が効かないという欠点があり,思うような結果が得られなかった.これに対し,連続的なモデルにおいては,可能な限りラベル間の距離を広げることや,路線を避けて駅名を配置することなどが可能となり,良い結果が得られたと思う.今後は他の例でその実用性を確かめるとともに,オンライン的な処理が可能となるような手法の開発を行っていく予定である.
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