研究概要 |
地理情報システム(GIS)は,世界中で地図データの整備が進み,GPSなどの情報技術の発展と共に急速に普及してきている.その中で,地図の構成要素は幾何図形の組み合わせとして考えられることから,計算幾何学の重要性がさらに増している.特に,デジタル化された地図において,必要な情報を文字として付加するためには,表示したい文字情報(ラベル)を適切な位置に読みやすい大きさで配置する必要がある.このような地図における注記の問題(ラベル配置問題)はこれまで人手によって経験的に行われてきたが,地図のデジタル化に伴い,自動的にラベルを配置する必要に迫られている.本研究では地図におけるラベル配置の自動化を目的として研究を行ってきた. 本研究でこれまでに提案してきた引出し線を用いた配置モデルに対して,今年度は様々な配置アルゴリズムを開発し,数値地図から取った東京23区内の地下鉄の路線図に対して計算機実験を行って,その有効性の確認を行った.また,これまでのラベル配置の研究においては,ラベルの大きさを決めた上で配置できるラベルの数を最大化する,ラベル数最大化問題が主流であったが,それだけでは,どの程度の大きさであればすべてのラベルに配置することができるのかということがわからない.このように,配置できるラベルの大きさの最大値を求める問題は,ラベルサイズ最大化問題と呼ばれている.ラベルサイズ最大化問題は正方形ラベルを配置するという理論的な研究が行われてきたが,本研究では文字数を考慮し,長方形のラベルの大きさを最大化する問題に対するアルゴリズムを提案し,計算機実験によって実証を行った.これらの研究は研究会,学会などで発表した.また,これからの電子地図の利用として,個人の特定の目的にあったように活用していくことが考えられる.そのような利用の一例として道案内図に特化したラベル配置問題も定式化し,その解法を提案し,計算機実験と実際に利用してもらうことによってアンケート調査を行い,その実用性に関する検討を行った.さらに,地理情報システムにおけるラベル配置を考える上で,考慮していかなければならない多くの基礎的な研究も同時に行ってきた.
|