研究概要 |
1.ブロックソーティングの入力に含まれる逆転の数の研究 情報圧縮に用いられるBurrows-Wheeler変換においては,ブロックソーティングと呼ばれるソーティング処理が実行時間を実質的に決定する。このブロックソーティングにおいて,挿入ソーティング法のような,隣接した要素の交換にもとづくソーティング法を用いた場合,実行時間は,入力に含まれる逆転の個数に比例する。そこで,逆転の個数が最大になるような入力がどのような入力であるかを知ることが重要である。本年度はその準備として,圧縮すべき文字列がランダムビットである場合に,ブロックソーティングの入力に含まれる逆転の個数がどれぐらいになるかを評価した。その結果,そのような場合の逆転の個数の平均が,ランダムな数列に含まれる逆転の個数の平均に極めて近いことと,両者の差が,圧縮すべき文字列の長さの素因数分解の形に大きく依存すること,の2点が示せた。 2.Burrows-Wheeler変換によるランダムデータの変換の研究 多くの場合,Burrows-Wheeler変換により文字列は,同じ文字の連続を多く含む,圧縮により適した文字列に変換される。しかし,その変換の数学的な性質はあまりよく理解されていない。特に,Burrows-Wheeler変換の最悪入力,つまりBurrows-Wheeler変換によっても圧縮に適した文字列が得られないような入力がどのようなものであるかは,まったく分かっていない。そこで,いろいろな特徴を持つ文字列について,それをBurrows-Wheeler変換をほどこした場合にどのような出力が得られるかを,具体的に分析してみた。ただし今のところ,あまり明確な分析結果はまだ得られていない。
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