本年度は、まず、図的構造からの制約投射に関する理論をさらに拡張し、従来より指摘されてきた図的表現と言語的表現のTrade-off現象を分析した。その成果は、2002年4月のInternational Conference on Theory and Applications of Diagramsにおいて発表された。また、グラフィック対話における間接指示と発話者の視点との関係を観察的に検証した論文(共著)を同会議で発表した。 さらに、図的構造からの制約投射に着目したグラフィックス対話の有効性を探るため、今年度は次の二つの実験・観察を行った。 (1)非対面遠隔音声対話における描画行動の観察。非対面で二人の話者が音声対話を行う際に、ネットワークで共有された描画面を用いて、どのような描画行動を行うかを観察した。従来よりWhittaker et al.らによって存在が指摘されたてきた「同時描画」(対話をしながら二人の話者が同時に同一画面上に描画を行う)の分布を、異なる対話課題を設定して比較し、同時描画がコミュニケーション手段としてに有効に働く条件と、有効に働かない条件を分析した。この研究の成果は、2003年8月のAnnual Meeting of Cognitive Science Societyで発表する予定である。 (2)対面音声対話における描画行動の観察。対面で二人の話者が音声対話を行う際に、どのような描画行動を行うかを観察した。とくに、音声言語上で行われる発話番交代に対し、描画行動がどのような影響を与えるかに着目し、分析中である。この結果は、2003年8月のSecond Workshop on Interactive Graphical Communicationにおいて発表予定である。
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