図的構造からの制約投射に着目したグラフィックス対話の有効性に関して、前年度までに行った実験・観察に基づき、次のような研究成果をまとめ、発表した。 (1)Hypothetical drawing過程の検証。グラフィック表現の制約投射に関する理論は、「hypothetical drawing」と呼ぶべき心的過程の存在を示唆するし、実際、図的推論に関する多くの先行研究がその過程を前提した議論を行っている。本年度は、この過程の存在を検証する視線追尾データをまとめ、8月のAnnual Meeting of Cognitive Science Societyで発表した。 (2)非対面遠隔音声対話における描画行動の観察。非対面で二人の話者が音声対話を行う際に、ネットワークで共有された描画面を用いて、どのような描画行動を行うかを観察した。この研究の成果は、今年度8月のAnnual Meeting of Cognitive Science Societyで発表された。 (3)対面音声対話における描画行動の観察。対面で二人の話者が音声対話を行う際に、どのような描画行動を行うかを観察した。この結果は、今年度8月のSecond Workshop on Interactive Graphical Communicationにおいて発表された。 (4)描画を伴う対話に関する研究の展望。描画を伴う対話は、従来の対話研究ではあまり研究対象とされてこなかった。しかし、(2)と(3)の研究を通じて、異なる表現系のインタラクション、表現に際してのメディアの選択など、コミュニケーションに関わる根幹的な問題が、そうした対話の分析を通じて解明されうることが分かった。こうした展望は、8月に行われたISCA Workshop on Error Handling in Spoken Dialogue Systemsにおける招待講演において提案された。
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