認知交代機能の解析と非標準計算論を基盤とした人工意識モデルの研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13680458
• 研究機関: 姫路工業大学
• 研究代表者: 松井 伸之 姫路工業大学, 工学部, 教授 (10173783)
• 研究分担者: FERDINAND Peper 独立行政法人通信総合研究所, 関西先端研究センター, 主任研究員 ; 西村 治彦 兵庫教育大学, 学校教育学部, 教授 (40218201)
• キーワード: 認知交代 / 意識の切り替え / カオスニューラルネットワーク / 結合振動子ニューロン / 量子ビットニューロン / 画像圧縮復元 / 非ホロノミック系の制御 / 非同期セルオートマトン

研究概要

平成13年度においては、(1)認知交代機能の解析および(2)その記述枠組のための非標準計算論の理論的整備とそのシステム応用の有効性を明らかにすることを目的に研究を進めた。すなわち、(1)については、(a)これまでの現象論的知見を意識切り替えの情報処理モデルの観点から見直し解析すること、(b)視認知における認知交代時間間隔分布モデルのガンマ分布形状の詳細を検討することを行い、その結果、カオスニューラルネットモデル並びに結合振動子モデルの精緻化の成果が得られ、これらについては一部研究成果の発表を行った。しかしながら、精緻な認知実験結果から明らかになってきた認知交代間隔のガンマ分布の自然数値パラメータαにおける分布ピークの存在について、そのモデル的解釈を結合振動子モデルではα=2で示唆し得たのみであった。他の自然数値1、3、4、5のモデル解析などに対する従来手法での解析とともに、非標準計算論への記述枠組の拡大が課題として残った。
(2)については、各種の非標準計算論の融合が引き出す性能の有効性を探る試みを行った。その結果、(i)量子計算論を基盤とした量子ビットニューロンモデルの整備と量子重ねあわせや量子力学の確率解釈の寄与の明確化並びにその応用システムとしての画像圧縮復元問題や非ホロノミック系の運動制御問題への有効性を示すことができた。また(ii)ディフェクト・トレラント非同期セルオートマトンの概念の創出と具体的なシミュレータの構成を行い得た。これらの研究成果の一部についても国内外で発表し得たことで、当初の研究計画は達成し得たと考える。しかしながら、理論的整備は未だ不十分であり、また、今後、ニューロンのナノスケールにおける量子セル計算にも注目し、これらを融合させて意識の情報処理過程をどのように定式化していくかが今後の大きな課題である。

研究成果

• [文献書誌] 松井 伸之: "量子描像ニューラルネットワークとその応用"計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会2001講演論文集. 277-282 (2001)
• [文献書誌] 西村 治彦: "認知競合現象と神経回路モデル"計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会2001講演論文集. 271-276 (2001)
• [文献書誌] Ferdinand Peper: "Self-Timed Cellular Automata and their Computational Ability"Future Generation Computer Systems, Special Issue on Cellular Automata. (To be published).
• [文献書誌] 幸田 憲明: "量子ビットニューロンモデルによる階層型ネットワーク"電子情報通信学会論文誌D-II. J85・4(掲載予定). (2002)
• [文献書誌] Noriaki Kouda: "Image Compression by Layered Quantum Neural Networks"Neural Processing Letters. (To be published). (2002)
• [文献書誌] 礒川 悌次郎: "結合最急降下法学習を導入した階層型ニューラルネットワーク"第40回計測自動制御学会学術講演会講演論文集. 211B-1 (2001)
• [文献書誌] 安積 潤: "結合振動子ニューラルネットワークによる認知交代現象のモデル化"第40回計測自動制御学会学術講演会講演論文集. 211B-3 (2001)
• [文献書誌] Teijiro Isokawa: "A Neural Network incorporating Coupled Gradient Descent Method"Proceedings of Fifth International Conference on Knowledge-Based Intelligent Information Engineering Systems & Allied Technologies (KES2001). Vol.2. 162-165 (2001)
• [文献書誌] Jun Adumi: "A Coupled Oscillatory Neural Network for Perceptual Alternation"Proceedings of Fifth International Conference on Knowledge-Based Intelligent Information Engineering Systems & Allied Technologies (KES2001). Vol.2. 883-887 (2001)
• [文献書誌] Tsutomu Murata: "Synchronization and Stochasticity of Neural Activity in Perceptual Alternation of Ambiguous Figures"Proceedings of 10th IEEE International Workshop on Robot and Human Interactive Communication. 86-91 (2001)
• [文献書誌] Teijiro Isokawa: "An Analysis of Learning Algorithm for Layered Neural Network with Coupled Gradient Descent Method"Proceedings of International Conference on Neural Information Processing (ICONIP2001). Vol.2. 171-175 (2001)
• [文献書誌] Haruhiko Nishimura: "Deterministic Chaos Approach to Multistable Perception"Proceedings of International Conference on Neural Information Processing (ICONIP2001). Vol.3. 1501-1506 (2001)
• [文献書誌] 幸田 憲明: "量子ビットニューロンモデルを用いた階層型ニューラルネットワークによる画像圧縮"計測自動制御学会関西支部シンポジウム講演論文集. 210-213 (2001)
• [文献書誌] Teijiro Isokawa: "Coping with Nonstationary Environments : A Genetic Algorithm using Neutral Variation"IEEE Transactions on System, Man, and Cybernetics Part A : Systems and Humans. (To be published).