研究概要 |
平成14年度においては、以下の(1)及び(2)について研究成果を得るべく研究を進めてきた。 (1)前年度の認知交代機能の解析で明らかにされた認知交代間隔のガンマ分布の自然数値パラメータαにおける分布ピークについて、その存在のモデル解釈を通じて意識の切り替えを明らかにしようと試みてきた。その確率過程に基づく解釈の研究成果は現在論文投稿中であるが、脳の情報処理における"揺らぎ"と"振動"の重要性に着目して、今までにも検討してきた確率共振を考慮した人工ニューラルネットワーク及び結合振動子ニューロンモデルを見直し、あらためてその効果を詳細に調べた。その結果、4ビットパリティチェック問題をベンチマークとして用いた場合ではあるが、確率共振効果がその情報処理において重要な役割を果たすことを詳細に見直すことができた。また、結合振動子ニューロンモデルを認知交代の記述のみばかりでなく、視認知における結合問題にまで発展拡張して適用しうる成果を得ており、これについての研究成果の一部については発表準備中であるが、詳細な検討は今後の課題として残った。 (2)非標準計算論への記述枠組の拡大も課題として残っていたが、これについては、各種非標準計算論の融合が引き出す性能の有効性を探る試みを行った。その結果、量子ニューロ計算の性能をより詳細に確認し、非ホロノミック系の実際的な制御への有効性を示し得た。また、四元数体系の枠組からセルユニットを構成し,それらユニットに基づくニューラルセルネットワークを用いて,アフィン変換学習問題への適用を試み,その有効性を示唆し得た。これらの研究成果の一部については国内で発表し得たこと、及び国外での発表準備中であるので、当初の研究計画は達成し得たと考える。しかしながら、理論的整備は不十分であり、これらを融合して意識の情報処理過程をどのように定式化していくかが今後の大きな課題である。
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