研究概要 |
独立成分分析法(ICA ; Independent Component Analysis)は,独立な未知信号の混合となっている複数の観測信号から元の未知信号を検出する手法である.この研究ではその独立性を,確率過程間の一般化距離である凸ダイバージェンスの最小化によって求める立場をとっている.これは,従来の手法であるKullback-Leibler情報量の最小化を特例として含んでいる.そしてこれは研究題目にある一般化された対数を使用することに相当している.本研究ではこの手法を用いたICAアルゴリズムを導出し,f-ICAと命名した.ソフトウェア的実現方法としては,登場する付加項を過去からの運動量(momentum)として実現する方法と(モーメンタム法),将来の予測量(look-ahead)として実現する方法(ターボ法)の二つがある.また,両者を併用することも可能である.これらは,従来のKullback-Leibler情報量の最小化を特例として含み,それよりもさらに高速となる.そして,上記の手法を得る過程において,従来は現れてこなかった統計量とその理論的性質も数多く得られている.例えばそれらは,一般化されたフィツシャー情報量,そしてCramer-Rao限界との関連である. 得られた手法は,従来法よりもプログラム複雑度をわずかに増加させるだけで数倍の高速化を達成できるので,fMRI脳画像のような大きなデータも,現在のパーソナルコンピュータで取り扱うことを可能とした.その結果,人間が画像を見ているときに,「静止画ではなくて動画像である」と認識する部位が,右脳の後頭部にあることを検出できた.このとき,副次的手法として,劣悪な局所最適生を避けるための誘導項を理論的に導き出すことにも成功した. 以上のように,本研究は新たなアルゴリズムの導出という理論面と,人間の脳のfMRI画像の解析といった実応用の両方についての成果を得て,次年度に進むことになった.
|