研究概要 |
独立成分分析とは,複数の観測信号が未知の独立信号の混合となっている場合に,それらの独立信号を推定する手法である.信号源は確率過程とみなされるので,独立性とは結合確率密度関数が積の形になることと解釈される.そこで独立成分分析においては,この性質がどの程度満たされるかを表わす評価関数を定めてそれを最適化するような繰返しアルゴリズムが用いられる.この研究ではその独立性を,凸ダイバージェンスの最小化によって求め,f-ICAと命名した.これは,従来の相互情報量最小化法を特例として含んでいる.ただし,自然勾配による数式化においては,未知の独立成分の確率密度関数を含んだ表現となるので,ソフトウェア化のためには,この量を観測データの性質を用いて具体化する必要がある.この研究においては,前段の変化分を加える方法(モーメンタム法)と次段の予測量を加える方法(ターボ法)の二つを提案し,いずれも従来法よりも数倍速いアルゴリズムとなることを確認した.さらに,この年度においては,特に次の項目の実現に焦点を当てて成果を得た. (i)独立成分分析においては,成分間の順序不確定性が必然的に存在してしまう.これは,アルゴリズムの収束後でも,ユーザーがすべての独立成分を視覚的に確認しなければならないという究極のオフライン性を意味する.そこで,アルゴリズムの本体に先見情報を正則化項として注入する手法を開発し,主要な成分が常に第一独立成分として現れるようにした. (ii)ヒューマンインターフェースを改良し,実験室的レベルから汎用ソフトウェアへの高度化を行った. (iii)以上のようにして作成された高速ソフトウェアを用いて,脳のfMRI画像における機能マップを得た.すなわち,(a)人間が動画像を見ているときに,「静止画ではなくて動画像である」と認識する部位(右脳の後頭部)と,(b)視覚野おけるV1とV2の境界部位の検出を行うことができた.
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