研究概要 |
視空間エピソード記憶に基づき行動プランニングを行なうためのシーン認識に関して,顕著性に基づき注目されたスポット内のオブジェクトをその位置と大きさに関して不変的に符号化すると同時に,その注目スポットの位置と大きさを符号化することによりシーン認識を行なう新たなモデルを構築した.このモデルにおいて,スポット内オブジェクトの認識は,新たに提案する相互結合を有する二層の成長型競合スパイキングニューラルネットワークの速い学習に基づきなされる.本ニューラルネットワークは,相互結合によりオブジェクトの認識とその心象の想起が可能であり,また,新たなオブジェクトに対してニューロンのリクルートにより成長すると共にオブジェクトの類似性に依存して認識構造を自己組織化する性質を有する.本モデルのオブジェクト認識性能とシーン認識性能を評価するために,本モデルを実装したカメラつきロボットを用いて実験を行なった.環境としては,迷路上に,赤,青,緑,黄,マジェンタ,シアンの円柱と,赤,青,緑,黄の円錐がランドマークとして配置された世界を用いた.実験の結果は次のとおりである.(1)円錐,円柱という単一オブジェクトに加えて,円柱,円錐から構成される複合オブジェクトも,いくつか注目オブジェクトとして認識された.(2)相違なる円柱,円錐,及び複合オブジェクトが相違なる唯一のニューロンにほぼ完全に符号化された.(3)ターゲットシーンのサーチはほぼ完全に成功しており,個々の注目スポットに含まれるオブジェクトの認識に加えてそれらの位置関係が認識できている,即ちシーン認識ができていることが確かめられた.このモデルは,昨年度の研究成果であるワーキングメモリモデルと結合したデュアルヘテロ連想記憶回路とカスケード結合されて視空間エピソード記憶回路を構成し,ロボットの視空間エピソード記憶に基づく行動プランニングに用いられる.
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