研究概要 |
(1)これまで開発したマルチチャンネルカメラシステムは,(A)波長域が可視域450-650nmに限定,(B)各チャンネルの透過帯域が半値幅約50nm,(C)画像の量子化分解能が10ビット,といった制約があった.今年度は,より分解能の優れたシステムを目指して新しいシステムを構築した.基本部は狭い透過帯域の液晶チューナブルフィルタと高感度冷却CCDカメラからなる.これにより400-700nm全可視域にわたり,暗いシーンでも一回の撮影で14ビット分解能の高ダイナミックレンジ画像を獲得できた. (2)液晶チューナブルフィルタによるマルチチャンネル画像データから照明光の分光分布と物体表面の分光反射率を推定するためのアルゴリズムを検討した.分光関数を記述するために,(A)有限次元線形モデルを用いる方法と(B)これを用いない直接的な方法を検討した.材料判別等の問題では,フィルタの透過帯域が狭いと仮定する後者の手法が効率的であることがわかった. (3)分光反射率に基づいて,自然界に存在する物体を同定するためのシステムおよびアルゴリズムを開発した.画像計測系は450-650nmを21チャンネルで,10ビット分解能を有するシステムとした.反射率表現には有限次元線形モデルを用いた.ハイライト抽出と画像分割のアルゴリズムを開発し,複数の果物やプラスチック物体を用いた実験で,システムとアルゴリズムの性能を確認した. (4)マルチチャンネル・ビジョンシステムを美術絵画のディジタルアーカイブの問題に適用した.油絵のような光沢のある絵画を分光的に記録し,それを任意の視環境の下でカラー映像として再現する.これには分光反射率や表面粗さといった反射パラメータの推定が必要である.6チャンネルのカメラを用いる計測系とアルゴリズムを検討した.
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