書誌データ(目録データ、メタデータ)作成において、基盤とされている書誌的実体レベルを変更し、より上位レベル実体を基盤として選択したデータ作成方式に対応する概念モデルを提案した。具体的には、現行方式が採用している「具象化物(manifestation)」を基盤とすることに換えて、知的・内容的まとまりそのものである「著作(work)」が文字・数字、楽譜記譜、舞踊記譜、音、画像等を用いて表現されたテキストの段階に対応する実体(テキストレベル実体)を基盤として採用した。また、提案した概念モデルに依拠したデータ作成方式について、実際にデータ作成を試みることで、データ作成時と利用時における問題点および有効性、実現可能性を検証した。 1.テキストレベル実体を基盤にした概念モデルの構築 既提案の概念モデルを広範に検討し、新たなモデルの構築を行った。E-Rモデルを記述言語として採用し、テキストレベル実体を含めて必要な書誌的実体を中核に設け、さらにそれら以外の各種実体、個々の実体の属性、実体間の関連を定義したモデルとした。また、設定した属性および関連と利用者タスクとの対応づけ(タスク達成における重要性評価)を行い、併せてタスクの実行順序に基づく利用シナリオを策定した。 2.構築した概念モデルに依拠した書誌データ作成方式の問題点および有効性、実現可能性の検証 (1)書誌データ新規作成:提案した概念モデルから直線的に(最短で)導かれる書誌データ作成方式を採用し、実際の資料群に対してデータ作成を試みた。(2)既存書誌データの遡及変換:現行処理方式の下で作成された書誌データを、いかに先の(1)で採用した方式によるデータに変換できるのかを検討した。これらによって、部分的ながら、提案した方式の有効性と実現可能性を示すことができた。
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