研究概要 |
1.多色表示装置を搭載した車両を運転した多くのドライバからの「赤色表示像は緑色表示像よりよく見える」と言われる報告は,自動車ドライバの視環境の分析により,表示像のコントラスト比が走行条件等で低くなる条件で発生することを示した.(これを「色相の差異による知覚の不均一」と呼ぶ.) 2.同一画面に同一輝度条件で複数の多色表示像を呈示し,情報認識の指標として認識正答率を用いて実験室実験で評価すると,赤色表示像の認識正答率が,緑色や青色表示像に比較して,数倍から10倍良好となるという結果を得,「色相の差異による知覚の不均一」が実験室実験でも定量的に実証できた. 3.分光視感特性に矛盾するように見えるこの現象を,色相別空間周波数特性という観点から実験評価し,輝度を規定している分光視感特性は空間周波数的には低周波成分での感度特性を表現しており,表示像情報の認識特性は,表示像の高周波成分での感度特性が大きな規定要因であることを明らかにした. 4.表示像の短時間視標呈示実験結果と,色相別空間周波数遮断特性の計測結果から算出した認識正答率とが,極めて良い一致を見ることが分かった. 5.分光視感特性は3種類の視細胞の感度特性を表わし,それぞれの視細胞の分布密度特性が色相別空間周波数特性を表現すると推論されることが分かった.自動車用表示装置等で発生する低コントラスト下での文字・図形情報の可読性では,後者の特性が決定的要素となることが示唆される. 6.以上の考え方を任意の色相の表示文字・図形情報に適応する場合を考察し,「背景地輝度バイアスを有する三原色のコントラスト閾変動」の知覚・認知モデルを構築し,モデルに従い,黄色,オレンジ,紫等の色相を選び,表示像としてスネレン図形対を用いて可読性を評価した結果,良好なモデルの検証結果を得ることができた. 7.以上の研究成果をまとめ,学術論文8件,研究会等発表19件,その他の発表4件(分担執筆著書含む)の成果発表を行った.
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