研究概要 |
平成13年度は2年間にわたる本研究計画の初年度として,当初計画に基づいて研究を行い,所期の目的をほぼ達成することができた.以下に,得られた成果の概要について述べる. 1.問題の文書の筆跡を詳細に分析するためには,まず文書から対象筆跡を正確に抽出する必要がある.これを実現するために,文書画像の写像ヒストグラムに基づく自動抽出処理方式を基本として,自動抽出が不可能な場合には人間が適宜介在する筆跡抽出方式を開発した.これを多様な様式・筆記状態の文書に適用した結果,通常想定されるほとんどの文書について正確に対象筆跡を抽出できることを確認した. 2.抽出された筆跡を,既知文書中の筆跡と詳細に比較するために,文書中の筆跡を字種ごとに整理してデータベースに格納する必要がある.本研究ではこのために市販のOCRソフトウェアを援用する方式を構築した.そして実際の文書に適用した結果,正認識率65%(正しい字種が第10位までの候補に入る割合は94%)であり,わずかな操作で効率的に文書中の筆跡を字種ごとに分類できることがわかった. 3.以上の成果を統合して,専門家が筆跡を詳細に比較分析するために,問題の文書と既知文書中の筆跡を同一字種ごとに整理した,いわゆる筆跡比較チャートを作成する対話型システムを構築した.そして種々の文書を用いて評価実験を行ったところ,従来の分析手法に比べて処理時間が約1/10であり,表示筆跡の精度も分析に十分であることが明らかになった. 4.筆跡の全体的な構造特徴を定量的に計測するための基礎的検討として,筆跡の線幅を正規化したパターンマッチング法を提案し,その効果を署名文字について確認した.
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