研究概要 |
本研究では,既存の空間解析・時系列解析手法を適用できない時空間現象を解析するための,新たな手法を提案し,実データへの適用を行った.対象とする空間オブジェクトとして,1)ポイントデータ,2)ライン(ネットワーク)データ,3)ポリゴンデータ,4)サーフェスデータ(スカラー場),の4つを取り上げ,それぞれの時系列変化を解析するための理論構築と実証分析による手法評価を実施した. まずポイントデータについては,それを一旦サーフェスデータに変換し,サーフェスの特徴点及びそれらの間の空間関係を用いて点分布を記述・可視化する方法を提案した.この方法は,可視化においてGISの利用を強く意識しており,今後広く用いられることが想定される。この手法を商業集積の空間構造変化を分析する際に用いたところ,視覚的分析だけでは見つけることの困難な局所的変化も見出すことができた. ラインデータについては,リンクを最小記述単位とし,各リンク変化をいくつかの定量的指標によって評価,全体の変化を記述する方法を提案した.道路ネットワークなどの解析に適した方法であり,実際,京都の道路ネットワーク解析ではいくつかの新たな実証的知見を得ることができた. ポリゴンデータについては,ラインデータと同様,変化を記述するための最小単位を予め定め,全ての変化を最小単位に分解,全体を記述するという手法を採用した.この方法は,ポリゴン変化の中でも特に離散的な変化の解析に適したものであり,コンビニエンスストアの商圏構造分析に応用して有用な結果を得た. サーフェスデータに対しては,特徴点から自ずと導き出される2通りの時空間分割を利用した分析手法の開発を行った.この方法は,一つの現象に対して時間と空間という2つの異なる視点を与えるものであり,従来個別的であった空間解析・時系列解析を融合する新たな研究の方向性を示すことができた.
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