研究概要 |
「社会経済相互作用データのための一般化オッズ比分解法の開発」と題した当研究において、平成14年度は以下の研究に着手し、成果を得た。 1.都道府県間電話通信需要1989-2001に対してオッズ比分解法を適用し、関係性、放出性、吸収性、全体調整項の各要因に分解し、放出性、吸収性の要因分解をパネル分析を用いて実施し、応用地域学会で発表した(雑誌論文1)。 2.関係性を表現する潜在空間を「歪んだユークリッド空間」として、定式化を数種類行い、プログラム化した。 3.都道府県間人口移動1954-2002に対して「歪んだユークリッド空間」を利用したオッズ比分解法を適用し、関係性、放出性、吸収性、全体調整項、誤差項への分解作業を行っている。関係性の分解精度は大幅に改良されるものの、大局解を得るために非常に計算時間が要する。この作業は完了していない。 4.最尤推定を用いるオッズ比分解法の基礎付けを行うため、線形化した重力モデルについて一般化最小自乗推定法を用い、関係性、放出性、吸収性、全体調整項を「不偏性」を保持した「一意的分解」が可能であることを、Magnus & Neudecker(1988,1999),Harville(1999),Turkington(2002)により整理統合されたベクトル微分を含むベクトル演算を利用して示した。この方法により、分散不均一、かつ非正規分布を取り扱う最尤推定オッズ比分解法のために、非常によい初期値を与えることが可能になった(雑誌論文2)。 5.同様に、対角要素が利用できない場合の線形化された重力モデルについて、一般化最小自乗推定法を用いた「一意的分解」が可能であることを示した。この場合は、関係性と潜在空間の間の関係の定式化が統計的に十分に行われなければならず、その結果が放出性、吸収性の分解に影響を及ぼしてしまうことが明らかになった。つまり先に考察した「歪んだユークリッド空間」の応用課題に即した定式化の探索が重要な課題であることが明らかになった(近日公表予定)。
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