本研究は、電気系、機械系や流体系などの異なる系からなる複合システムに対して、物理的相似則に基づく統合モデルによるシステム安全設計支援方法の確立を目的とする。 平成13年度は、システム事故原因の導出方法と要素故障を検出するセンサ配置とその診断方法について検討した。故障原因として、ハードウェア、ソフトウェアならびに人間行動を考慮する必要がある。ハードウェア挙動はボンドグラフにより表現し、その各要素の特性を変化させる入出力関係の連鎖としてソフトウェアや人間行動を表現した、統合システムモデルによりシステム事故を生じうる因果系列を導出する。防御系の効果を考慮したシステム事故発生条件の導出方法を提案し、簡単な化学プロセスの解析例でその有効性を確認した。また、要素故障時間順序を考慮したシステム故障発生確率の簡単な評価方法を提案し、マルコフ解析と比較してその有効性を検証した。さらに、システム安全設計の一つとして、ボンドグラフで表現された複合システムで要素故障の同定に必要な検出点の設定、ならびに観測点の検査順序法を提案し、簡単な複合システムでその有効性を確認した。 平成14年度は、安全設計支援システムの枠組みを完成し、事例解析による総合評価を行った。また、統合システムモデルの枠組みを利用した診断方法として、ダイナミックベィジアンネットを検討した。システム安全設計の基本である多層防御のためには異常事象の同定とその損失評価が重要である。システム異常の潜在的異常伝播系列を導出し、防御系を考慮したその発生頻度により現状リスクを評価する。リスクが許容できなければ、安全対策を検討して低減を図る枠組みを段階的な安全設計支援の枠組みとし、蒸留塔の解析により解析枠組みの妥当性を確認した。システムの物理的挙動を表す挙動モデルとシステム故障や要素故障の時間的な遷移を表す確率モデルを統合したダイナミックベィジアンネットを故障診断に用いて、システム状態推定ならびに異常状態の診断が簡単に行えることを確認した。
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