高齢者における高所作業環境適正化に関する実験的研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13680521
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 臼井 伸之介 大阪大学, 人間科学研究科, 助教授 (00193871)
• 研究分担者: 江川 義之 独立行政法人産業安全研究所, 主任研究官 (50358438)
• キーワード: ヒューマンエラー / ヒューマンファクター / 高齢者 / 墜落災害 / 精神負荷 / 二重課題法 / 生理的負担 / 高所作業

研究概要

本研究ではまず高齢作業者の墜落災害実態を把握するため、200件の墜落災害記録調書をヒューマンファクターの観点から分析した。分析事例は高齢者(50歳以上)100事例、若年者(39歳以下)100事例であり、また工事の種類は墜落災害の多いビル工事、木造工事に絞った(それぞれ100事例)。 分析の結果、被災者の職種、墜落の高さ、墜落時の行動パターンにおいて高齢者と若年者に差異が見られた。また記録調書の記述内容を分析することにより得られた発生要因を因子分析した結果、7因子(安全帯省略、手順省略、コミュニケーション不足、誤判断、天候不良、開口部、安全通路)が抽出され、主に高齢者は若年者と比較して、手順省略要因、開口部要因の関与が高いことを見出した。
次に実験棟内に建設した高さ約10mの仮設足場上において、種々の作業条件が高齢作業者に与える心理・生理的負担を明らかにする実験を行った。実験条件は災害事例分析結果等を考慮し、年齢、高さ(地上、6層)、作業床幅(50cm,24cm)、作業負荷の有無とした。また測定項目は歩行速度、心拍、呼吸、姿勢、副次課題反応時間(歩行中に1桁のランダムな数字を2秒に1数字の割合で音声呈示し、被験者は特定の数字にのみ出来るだけ早く音声で反応し、その正誤および反応時間を計測する)、主観的評価(NASA-TLX)であった。被験者は高所作業経験のある高齢者8名(50歳以上)、若年者8名(39歳以下)であった。
生理的測定項目の分析の結果、作業床幅、作業負荷の有無の条件で高齢者は若年者より有意に歩行速度が遅くなることがわかった。また高齢者は作業負荷の有無に係わらず、作業床幅が狭くなると、歩行速度が有意に遅くなっていた。ただし歩行速度の低下をピッチと歩幅で検討すると、歩幅は変化しないが、ピッチは遅くなっており、高齢者の24cm作業床歩行における危険性を示唆する結果が得られた。

研究成果

• [文献書誌] 鈴木芳美, 白井伸之介, 江川義之, 庄司卓郎: "墜落災害の背景にあるヒューマンファクターに関する調査"産業安全研究所特別研究報告. NIIS-SRR-NO.22. 7-14 (2001)
• [文献書誌] 江川義之, 臼井伸之介: "高所作業における生理・心理的負担要因"産業安全研究所特別研究報告. NIIS-SRR-NO.22. 15-24 (2001)
• [文献書誌] Usui, S., Egawa, Y.: "Psycho-physiological analysis of mental workload at a high-elevated work place"Japanese Psychological Research. Vol.44 No.3. 152-161 (2002)
• [文献書誌] Usui, S., Egawa, T.: "Analysis of mental workload at high-elevated work place(1)-Measurement ofpsychological responses-"XXV International Congress of applied psychology. CD-ROM. (2002)
• [文献書誌] Egawa, T., Usui, S.: "Analysis of mental workload at high-elevated work place(2)-Measurement of physiological responses-"XXV International Congress of applied psychology. CD-ROM. (2002)
• [文献書誌] 臼井伸之介, 江川義之, 庄司卓郎, 中村隆宏: "墜落災害の背景にあるヒューマンファクターに関する研究 -高齢作業員と若年作業員の比較-"産業・組織心理学会第18回大会論文集. 50-53 (2002)