視覚障害者が単独で道路を横断することは、きわめて困難なタスクの一つとして広く知られている。その困難な状況を軽減するために、道路横断帯が開発され、各地に普及している。本研究では利用者の視点から、この横断帯を評価し、標準的な敷設法を策定するための基礎的な資料を収集することを目的とした。これまでの研究知見を総合すると、横断帯の敷設法として、次のことが提案される。 (1)横断帯の敷設には、視覚障害者誘導用ブロックと音響信号機の設置が前提となる。 (2)横断帯は横断歩道を挟んで相対する歩道上の線状ブロックを結ぶ線上に敷設する。 (3)幅は基本仕様の30cmでは狭すぎる。 (4)横断帯直前の歩道上に、その位置と方向を示す触覚的手がかり(サインブロック)を置く。 (5)横断帯敷設位置の手がかりを増やすため、音響信号機のスピーカをサインブロックの上方に設置する。 上記の提案は、視覚障害者用移動支援設備の整備において実際上重要な示唆を含んでいる。視覚障害者のための支援設備として、誘導用ブロックや音響信号機、そしてここで取り上げている横断帯が知られているが、それぞれの担当部署は、誘導用ブロックは道路管理者、音響信号機は警察、横断帯は道路管理者もしくは警察と別々になっている。どれも視覚障害者が安全に移動することを支援する設備でありながら、全く別個に設置が計画され、実施されているのである。これらの設備は協働的に機能するように設置されると、視覚障害者にとって極めて有用であることを本研究は実証した。一般に支援設備等の設置ガイドラインはその担当部署において策定されるが、担当部署を越えた議論が今後是非とも必要である。
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