電子部品、塗料、食品など9社における調達・生産・物流・販売を包含する多段階のものの流れの実態調査を行った。その結果、各段階におけるフロー制御が押出型と引張型に分類されること、また、生産形態が見込型から受注型に移行していることが浮き彫りにされた。これは、近年の景気後退にともなう製品在庫保有のリスク増大が大きく影響しており、多段階システムにおけるスムーズなものの流れの実現において、見込生産に伴う仕掛在庫の保有リスクを本研究で開発を目指すシミュレータに組み込むことが必要なことを示唆している。 従って、受注・見込みハイブリッド生産方式の性能評価では、受注によるかんばん枚数の増加(生産指示の繰上げ)と需要を見込んだ先取り生産における仕掛在庫の意味の相違に着目し、製品劣化に伴う廃棄リスクと仕掛在庫により資金固定リスクを区別して評価する仕組みを導入し、その性能を評価している。 また、従来、かんばんは離散化された計数値として取り扱われていたが、時間バッファーの概念を導入し、連続値としての扱いを可能とし、スムーズなフロー制御を可能にすることができた。これは、国際生産・物流のシミュレータの機能を、現状分析としてよりも、むしろ、新しい方式を提供するところまで拡大できる成果と考えている。 多重ループかんばん制御方式の性能評価においては、トヨタかんばん方式よりも有効な制御方式を構築できることが明らかにされた。ここでは、システムの生産性能と在庫スペースが評価尺度として取り込まれており、より汎用性の高いフロー制御が実現可能である。しかしながら、以上の研究では、単一品目を対象に解析が進められて、多品目への拡張が必要となってくる。 資材・製品等の調達のための各種在庫管理方式の統一的比較については、いまだ、十分な成果は得られていないので、次年度以降において継続して研究を行う。
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