研究概要 |
本年度は2年目であり,待ち行列ネットワークの定常人数ベクトル分布の裾の減少率に関する研究を進めた. 1.一般化ジャクソンネットワークモデルが十分な情報を含む背後状態を持ち原点に壁のあるマルコフ1次元加法過程によりモデル化できることを示した.ここに,背後状態の推移確率は加法過程の値が0になった場合を除いて加法過程の値によらない.このモデルの定常結合分布から定常人数ベクトル分布が得られる.また,この定常人数ベクトル分布の裾の減少率は,壁を取り除いたマルコフ加法過程の逆時間過程に関する初到達確率と密接な関係があることがわかった(国際会議で発表). 2.モデルを更に限定すると,定常分布の裾の確率がマルコフ再生方程式の解として得られる.この場合,前年度に研究した有限個の背後状態を持つ単一ノードモデルに対する方法を拡張し,原理的にはマルコフ再生過程により裾の減少率を求められる.しかし,一般に背後状態の集合が加算無限または連続ベクトル空間になり,減少率の具体的な計算手順は分からない.そこで,モデルを限定し,背後状態が加算無限個の場合に減少率を具体的に求める手順を与えた(現在投稿中). 4.上記の理論的な研究と平行して,与えられたベクトル方向の減少率を直感的な論理に基づき定常方程式から直接計算する方法を考案した(論文で発表).この方法では,減少率が凸の制約領域を持つベクトル空間上の最大・最小問題の解として得られる.これまでの理論的な結果と矛盾しないことを確かめると共に,計算プログラムよる数値計算を行いモデルの特性を調べた.この方法の検証は今後の課題である. 5.上記の他に基礎的研究として,取り出し型の待ち行列ネットワークの定常分布,マルコフ変調型流体待ち行列モデルの定常分布の行列指数形式表現,割り込みのあるマルコフ変調型流体ネットワークの定常分布について研究を行った(論文で発表).
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