研究概要 |
反射壁をもつマルコフ加法過程の定常分布の裾の減少率に関する研究を進め,その結果を各種の待ち行列やそのネットワークモデルに適用した.特に,ネットワークのノード間の影響を理論的に調べることができた. 1.GI/G/1形式待ち行列:この確率過程は非負の整数値を主成分とし可算無限個の背後状態をもつ.このため,背後状態を適切に選ぶとネットワークモデルを記述できる.従来この種のモデルは行列解析が行われてきたが,本研究ではマルコフ加法過程,双対過程(時間を逆転し加法成分の符号を変えたもの),Wiener-Hopf分解を適用することにより,自然な条件の下で定常分布の裾の加法成分に関する減少率を求め,優先権付き待ち行列に適用した(論文を投稿中). 2.反射壁を持つマルコフ加法モデル:上記の結果を加法成分が実数値,背後状態が任意の可測空間の場合に拡張し,定常分布の裾の減少率を調べた(論文を準備中). 3.GI/G/2待ち時間:2のモデルを使って,窓口が2つのGI/G/2待ち行列モデルにおいて,定常待ち時間分布の裾の漸近特性を,サービス時間分布が整数のオーダーで減少する,すなわち,重い裾をもつ場合について調べた.トラヒック密度の値により状況が変わることがわかったが,漸近特性については研究中である(共同研究を継続中). 4.短い待ち行列を選ぶモデル:1の結果を2つの待ち行列があり,到着客が短い行列を選ぶ場合の定常分布の裾の減少率を調べた(共同論文を準備中). 5.ノード間の影響:2つのノードをもつジャクソンネットワークにおいて,1つのノードの待合室を有限に制限した場合の他方のノードの定常分布の裾の減少率が,待合室を大きくしたときに収束することを示し、その極限を求めた.3つの場合があり、その1つは制限のない場合に一致する.このときのみ最初のノードが他方のノードに影響を及ぼさないといえる(論文を準備中).
|