これまでのサプライ・チェーン・マネジメントは供給中心のアプローチであるが、リユース、リサイクルなど環境負荷を考慮したマネジメントの必要性が認識されてきている。本研究では、サプライ・チェーンを従来の調達から販売だけではなく、リユース、リサイクルまでを含めた範囲に定義し(広義のサプライ・チェーン)、サプライ・チェーンの評価に製品ライフサイクルにおける環境負荷の評価を含めた方法を提案することを目的としている。 平成13年度は、サプライ・チェーンの範囲をリユース、リサイクルまで拡大して定義し、対象範囲のモデル構築を行った。次にこのモデルを用いて、マネジメントの観点から全体最適に及ぼす影響について検討するためのシミュレーションを行い、サプライ・チェーン内の情報共有化、特に共有情報の精度についての知見を得ることができた。 平成14年度は、多目的意思決定方法を援用した製品ライフサイクルにおける環境負荷を含めたサプライ・チェーンの評価方法についての検討を行った。具体的には、製品のライフサイクルによる直接的な環境負荷と製品の効用というトレード・オフにある要因を、多属性効用関数を用いて環境負荷のモデル化を行った。さらに、製品ライフサイクルを考慮したサプライ・チェーンの評価方法として、マネジメントの観点からの評価と製品ライフサイクルの環境負荷の評価を統合した評価方法の提案を行った。 研究計画では、この評価方法に基づいたサプライ・チェーンの設計方法を検討する予定であったが、この点はまだ十分な成果が得られておらず、今後の研究課題としたい。
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