企業では、その組織が社会に提供するものやサービスに対する顧客満足を高めるために、多様化しているユーザーニーズや潜在ニーズを掴み、魅力ある商品を創出することに苦慮している。一般に、ユーザーニーズを発掘する方法としてグループインタビューや選択肢型の質問紙票によるアンケート調査が推奨されているが、このようなツールは、商品企画がある程度進んでいれば有効な手段となり、また調査対象とするユーザーを限定して精度の高い情報収集をすることに意義があるが、企画が進んでいない段階で、虚心坦懐にユーザーニーズを発掘するには、回答の限定や誘導など企業側の意図が入る可能性がある。 そこで、本年度は、Web上で文章による自由回答形式のアンケート調査により、ユーザーの生の声を直接収して、形態素解析の方法によってキーワード抽出を行い、キーワードを変量に、個人をケース(サンプル)とするデータセットを作成して、数量化III類による分析結果にCARTをハイブリッドしてデータ構造の探索を行い、商品コンセプトを考案・決定する橋渡し役としてのデータマイニングの方法論を提案した。 得られた成果としては、数量化III類のような多変量解析で、幾つかの平均的で大まかなデータ構造を抽出し、代表的なデータマイニングツールの一つとされる樹形分析の方法論であるCARTを適用することによって、従来の分析では得られにくい少数のニーズの中から、商品企画に必要な重要情報を取り出すことが可能であることを提示し、方法論としてのデータマイニングの意義が認められることを明らかにした。
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