本研究の目的は、まず、第一に耐久消費財を使っている消費者はいつ買い替えをするのか、何故買い替えをするのか、そしてどのメーカーのどのブランドに買い替えるのかという疑問に答えるモデルを構築することである。第二には耐久消費財の競争市場で、企業にとって市場はどこか、競争相手は誰か、消費者のブランド・スイッチング行動の属性順位はどうなっているのかを明らかにすることである。これらの研究によって、従来ブランド・スイッチングに関する研究において取り上げられてこなかった耐久消費財の特性が明らかとなり、製品開発の一助となることが見込まれる。 第一の目的に対応する研究としては、買い替え時点のダイナミクスを分析する為に、現在所有している耐久消費財と代勘案の効用が時間の経過とともに変化すると仮定して、ハザドレートと時間の経過に依存するマーケティング変数によって解析した。さらに買い替えをする時のブランド選択行動とブランド・スイッチング行動を分析する為に、多項ロジットモデルを採用し、スイッチング・コスト変数も考慮した。実証分析では耐久消費財における最近の典型的な消費者の買い替え行動を示している携帯電話に関するデータを収集、分析することで本モデルの有効性を検証した。 第二の目的に対応する研究としては、耐久消費財のブランド・スイッチングが非対称性を有していることに着目し、非対称ブランド・スイッチングデータを活用した遷移パターン定数や非対称距離を定量化する変換関数を提案し、引力モデルの考え方に基づいたモデルを構築した。また、ブランド・スイッチングの非対称性を空間表現し、ブランド間の関連性を明確化するために非対称多次元尺度構成法を用いて、マッピングを行なった。この実証分析についても、第一の研究と同様、携帯電話の買い替え行動を対象として行なった。
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