筆者らは2000年に神戸市東灘区において、兵庫県南部地震当時の被災状況・救助活動と現在の地区防災に関する調査を行い、兵庫県南部地震による家屋倒壊と居住者の行動、家屋内への閉じ込めと人的被害の実態を明らかにした。また、東灘地区と岡崎・太田による北淡町の調査結果を比較し、都市と町村の地域差にもかかわらず、共通する人的被害の傾向を明らかにした。 今年度は、自力脱出以外を閉じ込めとしていた従来の定義を見直し、新たに空間的閉じ込めと身体的閉じ込めに分類した。従来定義と新定義による閉じ込め群について、住家全体の被害、重い家具の転倒、負傷率について比較した結果、総じて新定義による閉じ込め群の方がより厳しい状況下にあることが確かめられた。閉じ込めレベルが閉じ込め無し、空間的閉じ込め、身体的閉じ込めと高くなるにつれて、状況がより厳しくなることも確かめられた。また、住宅の損傷度を基準に「(空間的・身体的)閉じ込め確率」、「ケガの程度とその確率」について比較した結果、いずれも住宅の損傷度が高くなるにつれて、確率が高くなることがわかった。特に住宅の損傷度が完全崩壊になると、身体的閉じ込め確率は急激に高くなる。個人の身の危険度では階数別で比較した結果、2階の方が1階よりも身の危険度が低い、または同じ危険度でもその程度が軽いとわかった。 さらに、樹形モデルの導入により閉じ込め発生と人的被害発生の影響要因分析を行った。その結果、閉じ込めレベル2(身体的閉じ込め)には住家全体の被害、築年数の2要因が大きく関係していること、閉じ込めレベル1(空間的閉じ込め)には住家1階の被害、住家全体の被害、地震発生時に居た階、築年数という4つの要因が関係していること、人的被害には重い家具の転倒、築年数の2要因が影響していることがわかった。
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