研究概要 |
本研究では人の死傷度(y)が家屋被災度(x)に依存し、閉じ込め(z)が家屋被災度(x)と人の死傷度(y)に依存するという因果関係を仮説として、1995年兵庫県南部地震について実施した東灘区のアンケートデータを基に,人の死傷有無、閉じ込め有無をそれぞれ目的変数とする数量化II類による判別分析を行った。その結果、家屋被災度、家具の転倒、地震時の所在(1階か2階か)、年齢が死傷有り無しに影響し、一方、家屋被災度、家具の転倒、地震時所在、年齢、負傷有無がが閉じ込め有り無しに影響することが確かめられた。閉じ込め状態を室内空間変容による閉じ込めと、身体拘束による閉じ込めに大別して、北淡町で1995年に実施された同様のアンケート調査結果を東灘の調査結果と比較すると、身体的拘束による閉じ込め率は9%程度で両者変わらず、一方、室内空間変容による閉じ込め率は北淡町11%に対して東灘で32%に達し、都市の居住環境(住宅や敷地・街路の狭さなど)の影響が推察される。2003年宮城県北部地震について、木造住宅被害の状況、人的被害発生状況を現地調査したところ、全壊家屋も倒壊に到ったものはほとんどみられず、閉じ込め救助の事例はほとんど無いが、室内被害等により人的被害が多数発生したことがわかった。これらの成果を活用して、家屋被災程度と居住条件等による閉じ込め危険度と救助需要のマクロな予測が可能となってきた。 救助過程については、兵庫県南部地震における消防救助記録の分析に基づき、閉じ込められた人が時間とともに衰弱していく過程を表すモジュール、救助現場への隊員割り当てモジュール、救助完了に要する時間推定モジュールをモデル化し、シミュレーション・システムを組み立てた。芦屋市、西宮市、東灘区の実救助過程とシミュレーション結果を比較することにより、救助活動の効果的運用と人的被害の軽減対策について検討している。
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