研究概要 |
わが国周辺海域任意地点における波候とその長期変化を高精度で推定しうる実用的波浪推算システムを確立するために,ECMWFによる表面風解析値資料に台風モデル風を組み込んだ海上風資料を20年間にわたり作成するとともに,表面風解析値資料を入力条件とする長期波浪推算をわが国沿岸の波浪観測地点で実施し,観測資料との比較に基づいて本システムの適用性を検討した。得られた結果の概要は次のようである。 1.中心気圧980hPa以下に発達した台風時を対象として,台風モデル風をECMWF表面風解析値資料に埋め込んだ海上風のデータセットを20年間にわたり作成した。この拡張型表面風解析値資料を入力条件とする20年間波浪推算システムは外洋ブイ地点や沿岸波浪観測地点における台風時高波浪に対して推算精度の向上をもたらす。 2.日本海西部の玄界灘に位置する4沿岸波浪観測地点における20年にわたる長期波浪推算資料と観測資料や計算資料相互の比較によれば,本システムは10〜20kmの水平スケールをもつ海域において島の遮蔽効果や沿岸地形の影響を受けた波浪をよく再現する。 3.わが国沿岸に設置された40箇所以上の波浪観測地点においてECMWF表面風解析値資料を入力条件として,20年にわたり行った波浪推算結果は,波候とその傾向変動および波高極値からみた観測資料の特性とよく符合することから,本システムはわが国沿岸任意地点の長期波浪推算に対して十分な実用性を有する。 4.51年間のNCEP表面風解析値資料を入力条件とする長期波浪推算システムは,わが国沿岸のほぼ全波浪観測地点における波候とその経年変化を高い精度で再現する。また,表面風解析値資料の精度に問題のある最初の10年間を除けば,わが国沿岸における波高は傾向変動をほとんど与えない。
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