本研究は、第一に、建物被害や土木構造物被害等の基本的被害については、地震動強さの予測とそれによる被害を経験的手法を用いて推定し、第二に、相互連関した災害が地域に与える影響を、国勢調査、事業所統計など様々な地域別指標を用いて地域特性を反映させつつ地域防災ポテンシャルを評価するものであり、そのための評価指標として地域活動力を提案した。 これは地域社会を構成する主な活動を経済・社会・行政の3つに分けて考え、それぞれを経済活動力、社会活動力地域活動力で評価することを試みるものであり、総合的な地震危険度予測をする際には、この指標により表現される値が通常時よりどの程度低下するのかにより、地域の危険度を評価する。本年度は、この一連の地域活動力評価に関する研究のうち、昨年度まで行ってきた地域活動力の提案および、その一つの軸である経済活動力評価を用いた兵庫県南部地震激震域における事例研究に加え、それを用いた地震危険度評価を東京湾岸域を対象に行い、この成果を日本建築学会構造系論文集第543号および第551号に発表し、2001年5月工学地震学・地震工学談話会(東京工業大学)において発表した。 さらに、地域活動力評価のもう一つの軸となる社会活動力評価に関して、その評価手法の提案と、東京湾岸域における通常時社会活動力評価の事例研究を行った。社会活動力とは、その地域における社会活動の潜在的な力を表現するもの)であり、地震災害発生時においては社会機能上の障害を、つまり生活支障度など生活に関わる被害関係の総合地震危険度評価指標となる。この評価により、社会活動力のポテンシャルの分布は、経済活動力のそれとはかなり異なったものとなっており、十分に検討する必要があることを示した。 この成果は2001年9月日本建築学会大会(関東)において発表した。また、いま現在日本建築学会構造系論文集に投稿すべくその原稿を作成中であり、さらに来年11月日本地震工学シンポジウム(2002)において発表予定である。
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