表層地質が地震動の特性に大きく影響し、地震動災害が限られた特定の地域に集中する現象をしばしば経験してきた。1985年メキシコ地震や、1995年兵庫県南部地震の地震災害に見られるように構造物群或は地盤の被害の分布・様相が、被害地域によって著しく集中、或は偏在し、局所的な敷地地盤の動特性(サイト特性)の差異が被害分布に最も大きな影響を及ぼしていると判断され場合が多いのである。このような地震被害甚大なサイトの地層構成は水平成層であるよりも、深さ方向のみならず、水平方向にも複雑に変化する地盤を伝播する地震動の焦点効果により生ずる地動増幅現象や、軟質地盤と硬質地盤からなる盆地瑞部において生成される盆地生成表面波などにより構造物に入力する地動特性の破壊能を飛躍的に増大させるためと推測されているのである。したがって、このような不整形堆積盆地において微動観測を実施し、空間自己相関関数法により推定した地下のS波構造に基づき強震動予測とその破壊能評価を行うことを目的とする。 地盤は交通振動や工場等の人工的な振動源や海岸に打ち寄せる波浪などにより常時振動している。この常時微動を円周上の等角度の位置に配置した地震計により、いわゆるアレイ観測することから地盤の表面を伝播するレーレーの位相速度(振動数の関数となり分散曲線と呼ぶ)を検出し、その分散曲線に基づき地下のS波速度構造分布を推定する。そのS波速度構造から堆積盆地の解析モデルを作成し、3次元あるいは2.5次元境界要素法により強震動予測を行い、構造物の破壊能評価を行う。
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