研究概要 |
自動変調とは,大強度相対論的電子ビーム(以下IREB)の強い自己電場を利用して,簡単な同軸空洞を介するだけでIREBに変調をかける方法である。出力がギガワットに達するIREBに外部電源を用いて変調をかけるには,大出力の電源が必要になるのに比べ,極めて簡便な方法である。今年度の結果を,簡単に述べれば,自動変調では電流立ち上がり時間に比べ,電磁波の空洞往復時間が短い場合,変調が弱くなる事を確認し,その解決方法を実現した。現実的には,IREBの電流立ち上がり時間は速いものでも数ns以上ある。これに対して,本研究の目標である超放射に必要と考えている1GHzの変調用空洞の電磁波の往復時間が0.5nsであるから,このままでは,IREBに変調をかけることが難しかった。そこで多段自動変調という方式を開発した。初段に長い空洞(電磁波の往復時間は長くなる)を用いて低い周波数で変調を実現して,その後,徐々に空洞長を減らしていくと,立ち上がり時間の遅いIREBからでも高い周波数で強い変調が得られることを実験的に確かめた。立ち上がり2nsのビームに対しては,初段に250MHzの変調を与えた後,500MHz,1GHzと周波数を挙げていくことでほぼ100%の変調が得られた。現在は,立ち上がり20ns,パルス幅200nsのビームに対して1GHzの変調をかけることを試みている。この実験では,更に空洞間の相互作用等を利用する方法を加えて強い変調を得ることを試みている。実験結果は当研究室に既存のPICシミュレーションコードKARATを用いてかなり良く再現され,より効率良く実験の諸パラメーターの選択が出来る様になった。超放射に関しては,現在,現有のビームパラメーターに対して最適化した共鳴器の設計を進めている。
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