研究概要 |
本研究では,大強度相対論的電子ビームの新たな自動変調方式を実証すると共に,自動変調された超短パルスビーム列からの断続的な放射を確認した. 従来提案されてきた,変調周波数に対応した同じ長さの同軸空洞を用いる自動変調方式では,ビーム電流立ち上がり時間が変調周波数の周期に比べて長い場合,変調が得られないことを実験的に明らかにした.この結果は,高周波変調に対しては大きな障害である.具体的には,立ち上がり20nsのビームを,周期1nsの同長の複数の空洞に入射しても変調を得ることはできなかった. これに対し,ビーム立ち上がり時間の1/3程度の周期をもつ空洞を先端に置き,所望の変調周波数に対応する空洞長まで,段階的に空洞長を半減していく多段自動変調方式を用いることで,立ち上がり時間の遅い大強度電子ビームに高周波の変調をかける多段自動変調方式を開発した.更に,最終段の空洞を複数置くことで,変調度が増大することを実験的に示した.具体的には,エネルギー約500keV,電流約5kA,パルス幅約200nsのビームに330MHzの変調をかけることに成功した.電流変調度は現在のところ30%程度である. また,多段自動変調方式を用いた場合,特に,最終段の同長複数空洞間の相互作用により,変調周波数が変化することを明らかにした.この対策としては,空洞間距離,空洞隔離等の方法を今後の指針として指摘した. 上記の自動変調されたビームを,サイクロトロン超放射の実験条件と同一の装置に入射し,複数の断続した電磁波放射を得た.この結果は超短パルス大強度電子ビームによるサイクロトロン超放射で期待されるものと一致する。このことは,一般の電磁波放射機構に比べて高い効率が期待される超放射の断続運転の可能性を初めて実証したものである.
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