研究概要 |
本実験装置のビームライン終端にビーム照射用真空容器を設置して,その中に温度制御可能なイオンビーム照射用のハース及びSiウエハ(100)の基板を置く.尚,照射用真空容器は付属するゲートバルブ及び直線導入器によって真空を保持したまま基板交換出来るように構築した.半導体の製造プロセスにおいては不純物の混入を極力回避することが望ましく超高真空が必要である為,ターボ分子ポンプによりイオン照射部の真空排気を行った.前年度にスパッタリング法や蒸発法で固体ソースから鉄多価イオンを生成した最適実験条件を用い,多価イオンのビームを発生させた.マイクロ波給電法やイオン引き出しを最適化し,多価イオン電流収量の増大化を図った.引き出されたイオンビームはアインツェルレンズやステアリングコイルによって収束,偏向等のビーム制御した.その際ビーム形状をビーム行路上に設置したワイヤープローブで測定してビーム照射のために最適化した.その後に多価イオンビームを用いて環境低負荷・適合性半導体材料のベータ鉄シリサイド(β-FeSi_2)の合成実験を行った.β-FeSi_2の合成に成功した照射条件はAr多価イオンビームでSi基板温度を300℃にしてプリスパッタした後,2〜5価Fe多価イオンを同一加速電圧(10kV)で高ドーズ量(10^<16-17> ion/cm^2)の注入実験を行い,ビーム照射終了後,約800℃でポストアニールを行った場合である.照射試料は薄膜用X線回折等で評価を行い,β-FeSi_2生成を確認した.尚,注入した鉄イオンの存在はオージェ電子測定によってもクロスチェックで確認を行い,その深さ方向の分布は理論的な予測にほぼ一致した. 更に,本研究で発生させた鉄多価イオンビームは,本研究室の他の装置で反応性スパッタリングによってガラス基板やSi基板上に生成したTiO_2の薄膜へイオン注入実験にも適用を行った.その結果,低ドーズ注入によってTiO_2薄膜の蒸留水液滴に対する接触角の光触媒性において,紫外領域光における劣化を生じることなく,可視光領域で光触媒性を増大させることにも成功した.
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