研究概要 |
核融合実験装置が大型化し,加熱用中性粒子ビームにより高いエネルギーが必要になるにつれ,負イオン加速によるNBI装置が求められるようになった.本研究は,磁気多極型イオン源内の電子温度分布を制御し,負イオンの生成に最適な条件を見出すことを目的として行われた. 負イオンを生成するためには,引出し面付近の電子温度を下げることが肝要である.このためフィルター磁場を引き出し面付近に加えるが,密度も同時に低下してしまうのが欠点である.本実験では,フィラメントの位置調整により,壁面の磁場に一次電子をトラップすることをねらった.この結果,電子密度の低下なしに,引き出し面での電子温度を大幅に低下させる事ができた. 更に,負イオン引出口近傍の電子温度を変化させ生成過程を制御するため,スーパーカスプ磁場によるフィルターに加え,コイル型の磁気フィルターを挿入した.フィルター電流を変えて行くと,あるところで負イオン電流が最大になることが分かった.すなわち,電子温度の制御により,負イオンの生成過程が制御できることがわかった. 最後に,フィラメント材,および希ガス混合の効果を調べた.フィラメント材料にTaを用いた場合に,低ガス圧でWフィラメントと比べ負イオン引き出し電流に数割の上昇が見られた.また,Arガスを混合したときには,混合割合が10%以下と少量であったにも係らず,電子密度の著しい増加が見られた.ただし,電子温度も同時に上昇してしまったために,負イオンの引き出し量は逆に減少してしまった. これらの実験を行うと同時に,静電プローブにより電子のエネルギー分布関数を測定する手法の開発をおこない,放電電子によると思われる高エネルギーの成分を観測することが出来た.これにより,従来計算機シミュレーションでしか得られなかった一次電子の分布を実際に確認する目処が立った.
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