研究概要 |
ITERなどの次期核融合実験炉でも高熱伝導度が要求される主要な部分に炭素系材料の適用が計画されている。しかし、炭素系材料をプラズマ対向壁に用いた場合、水素リテンションが多く高リサイクリング率となる、トリチウムインベントリが高くなる、という問題点がある。今後の長時間放電下での水素リサイクリングの評価・シミュレーションを行うには炭素系材料内部への水素拡散と材料全体での水素保持(バルクリテンション)についての知見が不足しており、定量的な評価が急がれる。 本研究は,炭素系材料中の水素のバルクリテンションと拡散挙動、放出挙動を定量的に評価し、材料科学的な知見と核融合実験装置のためのリサイクリング評価データを得ることを目的に実施している。科学研究費補助金交付期間である4年間の初年度は、さまざまな水素圧力下で炭素系材料への水素吸収実験を行い、その拡散係数を評価した。その結果、見かけの拡散係数は、圧力によって最大20倍に変化し、低い圧力で遅い拡散、高い圧力で速い拡散を起こしている事がわかった。これは、水素原子が欠陥と強い化学的相互作用をして、水素の移動が抑制されている事を意味している。また、温度を変化させて、この拡散挙動の活性化エネルギーを求めたところ、圧力変化に関わらず活性化エネルギーは、1.3eVという結果を得た。高い圧力での水素吸収の解析結果より真の拡散係数を求め、炭素系材料中での水素移動のシミュレーションを行うことができた。成果の一部は、国際学会(第10回核融合炉材料国際会議)、及び国内の学会(日本原子力学会、日本金属学会)で2回の報告を行った。
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