近年のLHD(大型ヘリカル装置、核融合研)での実験では、線型MHD安定性解析によって交換型モードが不安定であろうと予測された領域において、良好なプラズマの閉じ込めが達成されている。この差異を理解するためには、交換型モードを安定化するメカニズムを探らなければならない。交換型モードは圧力駆動型モードであり圧力勾配によって駆動されるので、このモードの共鳴領域において圧力分布が局所的に平坦化すれば安定化されると考えられる。線型解析の結果からもこの考えが妥当であることが示唆されている。一方、このような局所平坦領域を持つ圧力分布がプラズマの自己組織化の結果として実際に生じるかどうかについて調べるには、非線形的取扱いが必要である。そこで、今年度の研究では、この問題を解決するためのヘリオトロンプラズマに対する非線形MHD安定性コードの開発を行い、予備的な計算結果を得た。このコードでは、簡約化MHD方程式に基づいて摂動の時間発展を追跡する。空間の離散化として、動径方向には中心差分、ポロイダル、トロイダル方向には、フーリエ展開を採用し、項の積はフーリエ係数の畳み込みを計算することによって得られるようにしている。また、時間発展には、陽解法である2ステップ方を採用しているが、数値安定性のためにラプラス演算子は陰解法的に解いている。この非線型コードを、LHD配位で真空磁気軸位置が3.75m、固定境界、中心ベータ値が4%の無電流平衡に適用した。この平衡では、低n理想交換型モードのうちで、回転変換の値が2/3と1/2の有理面で共鳴するモードが線型不安定である。そこで、磁気レイノルズ数を1000000と仮定し、トロイダルおよびポロイダルモード数がそれぞれ0〜2、-1〜7のモード空間での摂動を非線型発展させた結果、圧力分布が変形して、非線型飽和が生じた。この飽和状態での圧力分布では、回転変換が2/3と1/2の有理面近傍で、局所的な平坦化がみられた。即ち、線型解析から予想されていたように、交換型モードが安定化されるように、プラズマの自己組織化が生じることが示唆されている。
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