研究概要 |
静止した超臨界ヘリウムを核融合炉用超伝導導体の冷媒に用いるための基礎研究を実施してきた。本年度は,圧力,温度を変化することができる容器を作成し,この中に超伝導コイルを設置し,擾乱に対する安定性を測定する実験を開始した。今回は特に,偏流によるフラックスフロー抵抗発生を擾乱源とし,静止した冷媒中での安定性を調べた。その結果,飽和蒸気圧下の液体ヘリウムでは高い安定性を示すが,圧力を印加したサブクール状態の液体ヘリウムもしくは臨界圧以上に加圧した超臨界圧ヘリウムでは,小さな擾乱量で常伝導伝播に至った。静止した冷媒では,定常的な発熱に対して,熱量の蓄積と継続的な温度上昇が起こるために,超伝導破壊に至ることが分かった。たとえ冷媒が高比熱であっても,時間が経過すると超伝導破壊に至ることになる。液体ヘリウムの場合は,沸騰による潜熱利用が温度上昇を抑制していることも分かった。超臨界ヘリウムを冷媒とするためには,ゆるやかな冷媒の移動が必要であるという観点から,次年度は圧力変動を加えることで安定性向上を試みる予定である。また超臨界ヘリウム中での試験も実施する。 一方,機械的な擾乱,つまり過渡的な擾乱に対する評価を行うために,電磁力による撚線内の素線の動きを模擬バンドルを用いて観測する方法を考案した。次年度は,機械的擾乱の発生メカニズムを明らかにするとともに,先に述べた超伝導コイルの試験で機械的擾乱と同等の熱擾乱を与え,安定性を調べる予定である。
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