エネルギー市場の目田化について、参加企業の行動モデルを明示的に取り扱えるシミュレーションシステムをネットワーク環境上にJAVA言語を用いて構築した。このシミュレーション環境の特徴は、市場への参加企業の行動を個々の独立したプログラムで実現できること、人間が参加することにより新たなアルゴリズムの探索が可能となること、が挙げられる。 具体的なシミュレーションの内容としては、発電事業者の設備投資行動を分析し、この分析をもとに、電力を安定供給することができる適切な設備投資を促す制度設計に対する知見を得ることを目的とした。そのために、電力中央取引所などのような場所で電力価格が決定される電力自由市場と、そこに参加する発電事業者の設備投資行動と電力価格決定をエージェント型計算機シミュレーションモデルとして構築し、その仮想的な市場における各発電事業者の設備投資行動を分析した。 そして、シミュレーションの結果、市場に占める規模の大きな発電事業者は、ピーク用電源として、発電単価の高いプラントを好んで建設し、逆に市場に占める規模の小さな事業者は、ベース用の電源を好んで建設することが示唆された。その結果、市場に占める規模の小さな事業者ばかりの市場では、設備過剰に陥る可能性があり、設備過剰の状態に陥ると、電力の取引価格が低下し、その結果発電事業者の収益悪化、ひいては設備投資の縮小による急激な需給逼迫に陥る可能性が示された。このため、設備過剰に陥らないための制度を検討する必要があるとの結論を得た。
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