CCA(銅・クロム・ヒ素)保存処理廃材からのバイオエネルギーの創製

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13680576
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 畑 俊充 京都大学, 木質科学研究所, 助手 (10243099)
• 研究分担者: 菊池 光 エスエスアロイ(株), 研究開発部, 取締役(兼研究員) ; 今村 祐嗣 京都大学, 木質科学研究所, 教授 (70151686)
• キーワード: 銅・クロム・ヒ素保存処理廃材 / バイオオイル / 木炭 / 直パルス式熱分解装置 / バイオエネルギー

研究概要

現在においてもまだ数多く残っているCCA(銅、クロム、ヒ素)廃処理木材の廃棄は、今後少なくとも60年以上にわたって問題となるはずである。CCA廃処理木材を低温で熱分解すると、木材からのヒ素の損失が少なくなるため、これらを廃棄する有望な方法の一つである。この際、銅とクロムはほとんど気化しないため、環境上問題はない。
申請者らの研究グループはCCA廃処理木材からバイオオイルを開発するという目的で、木炭の減量化と木炭内へのヒ素の閉じ込めを同時に可能とする熱分解方法の研究を進めてきた。平成14年度は熱分解中の木材内のCCAエレメントの反応機構を調べるために行った電子顕微鏡学的研究について行った。ヒ素化合物が揮発する前に熱分解残渣内に閉じ込められる反応の詳細を検討するために、反応温度450℃、反応時間10分の条件で窒素ガス雰囲気下においてCCA3号処理を施したベイツガ材の熱分解を行った。得られた熱分解残渣を、分析的透過型電子顕微鏡(TEM)、高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いて観察及び分析を行った。
加熱処理後の試料にはCCAエレメント由来のナノパーティクルが熱分解残渣中に密集していた。各粒子の同定を行うために、通常の透過電子顕微鏡を用いて制限視野回折パターンと暗視野像とから、各粒子の格子像と電子回折パターンを得た。解析の結果、熱分解残渣中に見られるほとんどの粒子を同定することができた。さらに、熱分解中のヒ素の飛散の仕方について理論的な考察を行った。熱分解中のヒ素の飛散の仕方として、二通りの経路が考えられる。ひとつの経路はCCA処理木材中に存在する未反応の五酸化ヒ素(As_2O_5)によって生じるもので、これは約150-200℃で飛散が生じる。もうひとつの経路は、反応によって得られたCr_2A_<s4>O_<12>の分解によって飛散する経路である。この分解は400℃よりも高い温度で生じるものと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] T.Kakitani, T.Hata, Y.Imamura, T.Kajimoto: "Behaviour of Arsenic in the Beginning of Pyrolysis of Chromium-Copper-Arsenate (CCA) Treated Wood"Twelfth European Biomass Conference, Biomass for Energy, Industry and Climate Protection, Proceedings of the International Conference held in Amsterdam. 651-653 (2002)
• [文献書誌] 柿谷朋, 畑俊充, 今村祐嗣, 梶本武志: "CCA防腐処理木材の熱分解廃棄処理の可能性について-熱分解時におけるヒ素の挙動-"第21回エネルギー資源学会研究発表会講演論文集. 411-416 (2002)
• [文献書誌] 畑俊充, P.Bronsveld, T.Vystavel, B.Kooi, J.DeHosson, 柿谷朋, 音野篤, 今村祐嗣: "CCA廃処理木材の熱分解に関する電子顕微鏡学的研究"第19回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス講演論文集. 847-848 (2003)
• [文献書誌] 柿谷朋, 畑俊充, 今村祐嗣: "CCA処理木材の浄化とエレメントの回収・再資源化へのアプローチ"第19回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス講演論文集. 849-852 (2003)
• [文献書誌] T.Hata, P.Bronsveld, T.Vystavel, B.Kooi, J.DeHosson, T.Kakitani, A.Otono, Y.Imamura: "Electron Microscopic Study on Pyrolysis of Chromium-Copper-Arsenate (CCA) Treated Wood"Journal of Analytical and Applied Pyrolysis. (in print).