研究概要 |
宇宙太陽発電所の実現へ向けて,重要な要素技術の1つである送電ビーム制御のシステムの開発を行っている。SPSの送電ビームを受電点に向けて送るように制御するレトロディレクティブ方式を用いるため,受電地点からSPSへ向けてパイロット信号を送信する必要がある。このパイロット信号にスペクトル拡散変調(SS変調)を施し様々な利点を得ることを提案している。実際にSSパイロット信号の特性を測定し回路の改良を行った。さらにSPSへ適用する際の検討を行った。 (1)SSパイロット信号受信器とアレーアンテナを用いて実際にパイロット信号の到来方向の検出実験を行った。単一の正弦波ならぴにSSパイロット信号での到来方向検出実験を行い,両者で検出精度がほとんど同じであることを確認した。複数の方向からSSパィロット信号を送信し,それぞれが正しく検出できることも実証した。さらに,精度の向上に努め,アンテナ端での送電電波と受信したパイロット信号の電力比が70dBのとき,±0.4°程度の精度で到来方向を検出できた。 (2)マイクロ波送電でSSパイロット信号を用いる際の番の難点は,同じ周波数帯に存在する大電力の送電電波が干渉波となり拡散符号の同期がとれなくなることである。この特性を改善するため,復調の前に帯域除去フィルタ(BEF)を挿入し干渉波を抑圧することと,ソフトウェアによる同期の検出を行う改善を行った.試作した復調器では,干渉波排除能力を約45dB改善することが確認された。 (3)本システムをSPSへ適用したときの考察を,理論とシミュレーションから行った。その結果,検出位相差の誤差に関しては放射パクーン・電力収集効率ともにほとんど影響しないことが分かった。送電電波による同期の困難性についても受信機に増幅器及ぴ減衰率の大きなBEFを用いることによってSSパイロット信号の受信が可能になることを示した。
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