研究概要 |
核融合装置などの大型装置に用いられるケーブル・イン・コンジット(CIC)超伝導導体では,通常の規則的な交流損失のほかに,長時定数の不規則な交流損失があることが多くの実測データから直接的・間接的に実証された。長時定数の発生するメカニズムとして多く提案されているが,その中で有力な候補として,最終ケーブルの1次前のサブケーブル外周に現れる素線と,その隣のサブケーブル外周の素線が接触すると,各撚りピッチの最小公倍数の位置で再度接触してループを構成するメカニズムを提案した。 このループの妥当性を検討するために,各素線のコンジット断面内の配置と導体長手方向の軌跡を,導体の製造工程を考慮して解析した。すなわち,各次数のサブケーブルの重心を中心に回転し,各次数のサブケーブルの1段前のサブケーブル間を区分するレファレンス線がサブケーブルの重心を中心に撚りピッチとともに回転し,また,各次数のサブケーブルの占める断面積が同じであると仮定して,各素線の重心位置を求めるプログラムを作成した。このプログラムを用いてピッチの最小公倍数に渡って素線の軌跡を解析した。 解析した素線の配置と実際の断面を比較するために,3^5=243本のCIC導体を製作工程と逆の方法で分解し,順序立てて番号付けを行った。このようにして,断面内位置を詳細に調べた結果,本来一体化していると予想していた3本で構成される1次撚り線の中の各素線が,飛び飛びに、点在する場合が比較的多く観測された。これらの撚り乱れは,導体製作時に発生するものと予想される。また,実際の素線の長手方向接触状況を観察すると,隣り合うサブケーブルの外周に現れる素線同士が相当の距離に渡って接触していると推定できることが分かった。今後,素線間の接触抵抗測定などを加えて,提案したループの時定数を解析し,実際に観測された長時定数と比較し,長時定数が発生する可能性を調査する。
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