研究概要 |
核融合装置などの大型装置に用いられるケーブル・イン・コンジット(CIC)超伝導導体では,通常の規則的な交流損失のほかに,数秒から100秒程度の時定数で,平均的に数10秒程度の長時定数を持つ不規則なループによる交流損失が存在していることが確かめられた。これらのループはCIC導体の構成に密接に関係していることが分かってきた。特に,導体の素線の軌道配置は導体の各サブケーブルの撚りピッチの最小公倍数の長さで,同じパターンが繰り返されるため,ある点で接触した素線は,最小公倍数の長さで再度接触して長いループを構成する。これらのループは,比較的長い距離を持ち,インダクタンスも比較的大きくなる。これらのループの基本的な時定数はインダクタンスとループを構成する接触抵抗の比で表される。 実際に使用したCIC導体の素線間の接触抵抗を測定した結果,点接触抵抗は約100μΩ程度であった。一方,CIC内の長ループのインダクタンスは10μH程度であるので,ループ時定数は約0.1秒程度になる。これらは観測された数10秒より短い。この原因として,素線間の接触半径が10μm程度の点接触状態の抵抗値のためと考えられる。 素線間の接触状態を観測するために,各素線の導体内の配置を調査した。その結果,本来3本の素線が撚られて一体化していると予想された1次撚り線は,実際には,本来の位置から大きく変位している状態のものがあることを観測した。定量的に検討するために,1次撚り線の中の1本が大きく変位している数を調べ,約10%程度存在することが分かった。この大変位した素線は,一般的に1m程度離れた位置では,一体化された1次撚りとなって観測される。このような大変位した素線はループを構成する他の素線と,点接触でなく長距離にわたる線接触の状態を形成すると推定される。接触長が10mm程度あると,点接触の約1,000倍となり,接触抵抗は大幅に小さくなり,時定数が100秒程度になる。したがって,これらが長時定数の発生する主要な原因と考えられる。
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