研究概要 |
核融合装置などの大型装置に用いられるケーブル・イン・コンジット(CIC)超伝導導体では,通常の規則的な交流損失のほかに,長時定数の不規則な交流損失があることが多くの実測データから直接的・間接的に実証された。長時定数の発生するメカニズムとして多く提案されているが,その中で有力な候補として,最終ケーブルの1次前のサブケーブル外周に現れる素線と,その隣のサブケーブル外周の素線が接触すると,各撚りピッチの最小公倍数の位置で同じパターンを繰り返すために,再度接触してループを構成するメカニズムを提案した。 これらのループの妥当性を検討するために,各素線のコンジット断面内の配置と導体長手方向の軌跡を,導体の製造工程を考慮して解析した。その結果,これらのループ数が相当に多いことが分かり,交流損失の原因となり得ることを示した。 これらのループは,比較的長い距離を持ち,インダクタンスも比較的大きくなる。これらのループの基本的な時定数はインダクタンスとループを構成する接触抵抗の比で表されるので,実際に使用したCIC導体の素線間の接触抵抗を測定した。その結果から,ループ時定数は約0.1秒程度で,観測された数10秒より短い。 この原因を調べるために,素線間の接触状態を観測した。各素線の導体内の配置を調査した結果,本来3本の素線が撚られて一体化していると予想された1次撚り線は,実際には,本来の位置から大きく変位している状態のものがあることを観測した。定量的に大変位した数を調べると,約5%程度存在することが分かった。この大変位した素線は,1m程度離れると,一体化される。このような大変位した素線はループを構成する他の素線と,点接触でなく長距離にわたる線接触の状態を形成すると推定される。接触長が10mm程度あると,数10μm程度の点接触直径の約1,000倍となり,接触抵抗は大幅に小さくなり,時定数100秒程度が予想でき,長時定数の発生する主要な原因と考えられる。
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